
株式会社OPTEMOが運営しているインサイドセールス研究会というコミュニティでは毎月オフラインイベントを開催しております。1月に開催されたイベントの内容について、より多くの皆様に知っていただく機会となることを願い、イベントレポートを作成しました。
今回のレポートは、2025年1月24日(金)に渋谷に位置するイベントスペースで開催されましたインサイドセールス研究会の内容をまとめておりますので、ぜひご覧ください。
インサイドセールス研究会について
インサイドセールス研究会は、『会社を超えてインサイドセールス同士が繋がり「師と友」を作れる場』として株式会社OPTEMOが運営しているコミュニティです。
インサイドセールスという業務の性質上、社外での横の繋がりが少ないという声を受け、2023年3月からこのコミュニティの運営を始めました。毎月1回、特別なゲストを迎えて実践的なノウハウを提供しています。また、Facebookのグループで情報発信もしており、誰でも無料で参加できます。
https://optemo.co.jp/lp/is_ken
今回のテーマ
今回のイベントでは、株式会社IVRy Inside Sales Manager森本 聖士様(@175cm71kg)をゲストにお迎えし、「700架電を削減したメールマーケティング〜インサイドセールスのための持続可能なハウスリスト活用術〜」というテーマで講演いただきました。モデレーターはOPTEMO代表の小池桃太郎(@MomotaroKOIKE)が務めました。

森本様には、ブルボン、ラクス、そして現在のIVRyでの経験をもとに、インサイドセールスの進化と課題解決に向けた取り組みをお話しいただきました。特に、顧客体験に焦点を当て、テクノロジーと人間の役割を掛け合わせた営業の新たなアプローチ方法について詳しく紹介していただきました。
森本様が執筆されている記事もぜひご覧ください!
▼4営業日分の商談目標数を創出する“生成AI×インサイドセールス×メールマーケティング”
https://note.com/175cm71kg/n/n949a881938e0
森本様ご講演
森本様がインサイドセールスマネージャーを務められているIVRy(アイブリー)は、月2,980円から利用できる対話型音声AI SaaS「IVRy(アイブリー)」を提供しており、電話応答の分岐設定や、AIによる自動応答・予約代行など、豊富な機能で電話業務を誰でもすぐに効率化することができます。
森本様は、IVRyのインサイドセールスが直面している主な問題として以下の4つを挙げています。
- インサイドセールスの成果 ≒ マーケティングの新規獲得広告成果の依存
- 電話アプローチの依存と、それが繋がらないリードへの対応の難しさ
- 営業時間外MQL(Marketing Qualified Lead)の増加と商談化率の維持
- IVRyが普及することで、営業電話が通じなくなる未来への備え
これらの問題に対して、森本様はインサイドセールスにおけるアプローチ手段の多様化を提案し、特にメールマーケティングやテックタッチ施策を駆使することの重要性を強調されました。
ここからは当日の講義内容をさらに深掘りしてお伝えします。
顧客目線でのコミュニケーションがより重要になる時代
講演の冒頭では、森本様がIVRyのインサイドセールスで向き合ってきた問題について顧客視点の観点からお話しいただきました。
顧客体験を配慮した営業アプローチ
「顧客視点でのアプローチ」を実現するために、IVRyではインサイドセールスチームがどのように取り組んでいるか、具体的な施策が紹介されました。特に強調されたのは、営業活動において顧客の意志を尊重し、電話アプローチに依存しない方法で顧客との接点を増やすことの重要性です。
そもそもインサイドセールスは大半のアプローチ手段が電話依存となっており、電話がつながらないことが原因で見込み顧客の増加に苦戦するという課題があります。また、MQL※の割合は営業時間外の方が多いという状況において、商談化率を下げないようにするためにはどうすればいいのかといった問題も生じています。
※マーケティング活動によって獲得した見込み顧客のうち、購入意欲が高いと判断されたリード
森本様は、こうした課題に対し、「メールの活用と工夫を行うことでその問題は解消できる」と語られました。IVRyではメールマーケティングやLPO(ランディングページ最適化)などを実施し、顧客体験を重視したアプローチを推進しています。また、商談化率を下げないために営業時間外に発生したMQLに対して自動的にフォローメールを送信するなど、スピーディーかつパーソナライズされた対応が不可欠であることも説明されました。

生成AIを活用した新たなメールマーケティングの改善
続いて森本様は、IVRyのメールマーケティング施策の改善プロセスについて詳しく解説していただきました。特に、CTA(Call To Action)の効果的な活用方法や、生成AIを活用したメール作成の具体例を紹介し、参加者の関心を集めました。
まず、CTAの改善について、森本様は「料金のお見積もり」という表現を「ご利用料金シミュレーション」に変更することでクリック率が向上した事例を紹介していただきました。「見積もり」という表現は費用の発生を連想させる一方、「シミュレーション」という表現に変更することで、気軽に試せる印象を与え、心理的なハードルを下げる効果があったと分析されています。
さらに、CTAボタンの最適化についても言及がありました。テキストリンクよりもボタン式のCTAの方がクリック率が高いことが実証データとともに示され、ボタンの色やサイズ、テキストの内容をA/Bテストで検証し、最適化することの重要性が強調されました。
また、生成AIを活用したメール作成の具体例として、顧客の属性や過去の行動履歴を基にパーソナライズされたメールを作成する手法が紹介されました。例えば、特定の製品に関心を示した顧客には、その製品に関する情報を提供するメールをChatGPTを用いて自動生成する方法をご説明いただきました。

その際、森本様は、ChatGPTのプロンプトエンジニアリングの重要性にも触れ、効果的なプロンプトを作成する際のポイントとして、顧客の属性情報、製品の特徴、競合優位性などを明確に指定する必要があると述べました。さらに、生成されたメールは必ず人間が確認し、適切に修正を加えることが不可欠であることも強調されました。
今回の講演では、AIを活用したメールマーケティングの可能性が示されるとともに、実際のデータを基にした具体的な改善手法が紹介され、参加者にとって実践的な学びの多い内容となりました。
生成AIの活用事例
ここからは第一部の後半で触れた、生成AI(特にChatGPT)を活用したメール作成のプロセスについて具体的に紹介していただきました。リードの発生を促すには、未接触のリードに対して「業種×リード発生月」でセグメントし、同業他社の事例メールを配信することで、他の同業者も導入していることを認識してもらい、より身近に感じさせることで潜在的な層へアプローチする戦略について説明していただきました。
まずは各セグメントに適した同業他社の成功事例を収集し、プレスリリース、ニュース記事、企業ウェブサイトなどを参考に、具体的な数値データ(売上向上率、効率改善率など)を含んだ事例を選定する。それらをもとに、リードが共感しやすい課題解決策やメリットを強調したメールをChatGPTを活用して作成する手法が解説されました。
さらに、0から導入メールを考案するのではなく、AIを利用して複数のパターンを短時間で作成し、より効果的な文面を選定することで、メールマーケティングの効率を高めることができる点も強調されました。この技術を活用することで、ターゲットに合った情報を効率的に提供し、商談獲得数を大幅に向上させることが可能であると紹介されました。
メールマーケティングやテックタッチ施策の効果

結果として、電話一本勝負では失注していた顧客や、営業電話を避けたいと考える顧客に対して、生成AIを絡めたメールを中心とした効果的なアプローチを実施することで、情報提供のハードルを下げることに成功されたとのことです。メールを受け取った顧客の中には、「参考になる情報が送られてきて、さらに詳しく知りたくなった」と感じるようになり、態度変容が起こったケースもあったとのことでした。
この変化は大きく、商談獲得数の20%以上が人を介在させることなく、テックタッチによって獲得されたという成果になりました。これは、従来の営業手法からの大きな進化であり、デジタルツールを活用することで、より効率的かつ効果的なアプローチが可能になったことを示しています。
最後に、森本様はIVRyのインサイドセールス組織の未来についても言及されました。インサイドセールスの役割は単に電話をかけることではなく、マーケティングや営業企画と連携しながら、顧客との関係を築いていくべきだと話されました。また今後は、マーケティング領域にも積極的に関与し、より顧客視点に立った戦略的なアプローチを実施していくことが重要であると語られました。
質疑応答とディスカッション
ディスカッションでは、インサイドセールスが直面する課題について深い議論が交わされました。特に、新規顧客獲得がマーケティング広告に過度に依存している現状や、独自のリード獲得・育成戦略の不足という課題が浮き彫りとなりました。参加者からは自社での苦労や試行錯誤の経験が共有され、電話主体のアプローチによる営業効率の低下や、見込み顧客の取りこぼしなどの具体的な問題点について議論がされました。
これらの課題に対して、森本様を中心に活発な意見交換が行われ、多様なアプローチ手段の導入やリードナーチャリング強化の重要性が確認されました。特に、IVRyの普及を見据えた新たな営業戦略の在り方について、参加者全員で考察を深める貴重な機会となりました。質疑応答とディスカッションを通じて、参加者それぞれが自社の課題解決に向けた具体的なヒントを得ることができ、有意義なセッションとなりました。
交流会の様子
講演および質疑応答が終了し、第二部の交流会がスタート。

交流会では直接質問をされる方がいたり、インサイドセールスの皆さん同士で情報交換や日ごろの活動のシェアをされたり、参加された皆さんがインサイドセールスの活用の仕方や、今後について和気藹藹とその場で意見交換をするなどして、オフラインならではの活気・熱量を感じる時間となりました。業界の最前線で活躍するインサイドセールス担当者同士が意見を交換し有意義な時間を過ごすことができました。
最後に
今回のインサイドセールス研究会では、インサイドセールスにおけるアプローチ手段の多様化と、特にメールマーケティングやテックタッチ施策を駆使することの重要性とその効果について詳細に共有していただき、さらにはAIを活用した具体的な手法についても紹介していただき非常に貴重なお話をしていただきました。
さらに、顧客体験を配慮した営業アプローチの重要性を再認識でき、今後のインサイドセールス活動における指針となる内容が詰まっており、参加いただいた方にとっても有意義な時間となったのではないでしょうか。
本イベントの内容が、ご参加いただいた皆さんのこれからの活動に少しでもお役に立てれば幸いです。