最終更新日: 2025.6.3

インサイドセールス研究会2025年5月例会レポート

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株式会社OPTEMOが運営しているインサイドセールス研究会というコミュニティでは、毎月オフラインイベントを開催しております。5月に開催されたイベントの内容について、より多くの皆様に知っていただく機会となることを願い、イベントレポートを作成しました。

今回のレポートでは、2025年5月15日(木)に渋谷に位置する千葉道場コミュニティスペースで開催されたインサイドセールス研究会の内容をまとめております。ぜひご覧ください。

インサイドセールス研究会について

インサイドセールス研究会は、『会社を超えてインサイドセールス同士がつながり「師と友」を作れる場』として株式会社OPTEMOが運営しているコミュニティです。

インサイドセールスという業務の性質上、社外での横のつながりが少ないという声を受け、2023年3月からこのコミュニティの運営を始めました。毎月特別なゲストを迎えて実践的なノウハウを提供しています。また、Facebookのグループで情報発信もしており、誰でも無料で参加できます。

https://optemo.co.jp/lp/is_ken

今回のテーマ

今回のイベントでは、SimilarWeb Japan株式会社のセールスディベロップメントマネージャー・加藤直也様をゲストにお迎えしました。「月間3,000件のインバウンド対応をして分かったターゲティング×温度感の重要性」というテーマで講演に登壇していただきました。モデレーターはOPTEMO代表の小池桃太郎(@MomotaroKOIKE)が務めました。

今回のインサイドセールス研究会は、合計で42社51名の方にお申し込みいただきました。

加藤様ご講演

加藤様はインサイドセールスマネージャーとして4年の経験をお持ちで、6年ほどマレーシアに海外赴任していました。これまで3社の外資テック企業で営業経験を積み、外資系のCRMやインサイドセールスのオペレーションに関する知見に精通していらっしゃいます。2025年1月にSimilarWeb Japan(シミラーウェブジャパン)株式会社に参画され、現在はSDRチーム(インバウンド担当)とBDRチーム(アウトバウンド担当)のマネジメントを担当されています。

Similarwebは、AIを活用したデジタルデータインテリジェンスソリューションを提供する企業です。本社はイスラエルにあり、2013年設立、2021年にNASDAQ上場を果たしました。日本法人は2017年設立で従業員数約30名、現在7年目を迎えています。マーケティング業界では「無料版のシミラー」として知られています。主な機能は競合サイトの訪問者数や直帰率の分析で、加藤様は「競合のババがどこにあるか見た状態で勝負できるツール」というキャッチフレーズを用いて紹介しました。

当日のイベントでは、以下の4つのトピックについてお話しいただきました。

・月間3,000件のフリートライアルから見えた「量と質」のギャップ
・限られたリソースで成果を最大化する「優先度付け」戦略
・「データ入力されないCRM」と新任マネージャーを取り巻く環境
・【ツールの活用事例】SalesmarkerとSalesLoftの実践

月間3,000件のフリートライアルから見えた「量と質」のギャップ

SimilarWebでは月間3,000件のフリートライアル登録数を誇りますが、商談獲得率はわずか0.9%という現実に直面しています。SDR3名体制で月30件の商談獲得(一人当たり月10件)という状況で、グローバル本社からは「3,000件もリードがあるのになぜ契約に結びつかないのか?」という厳しい指摘を受けており、インサイドセールスの現場で起きている「期待値と現実のギャップ」が浮き彫りになっています。

24%が電話番号なし、ターゲット部門の登録数はわずか20%

加藤様が1月~3月のクォーターで約11,000件のリードを分析した結果、24%は電話番号の入力なし、または「1111」「0000」などの無効な番号が登録されていたそうです。メールでのアプローチは可能なものの、電話では顧客にアプローチできない状況となっています。

さらに深刻なのは本来のターゲット顧客が不足していることで、マーケティング部門の登録者は全体の20%のみ、残り80%は営業部門やその他部門からの登録でした。

結果として「営業メンバーは疲弊しており、改善の必要に迫られている」と加藤様はおっしゃっています。

マーケ部門のKPIはリード数、セールスのKPIは売上

この問題を解決するため、加藤様は繰り返し問い合わせフォームの最適化を本社に訴えましたが、マーケティング部門の改善提案には大きな壁がありました。

これは外資系のベンチャー企業にありがちな現象です。つまり短期的な売上の追求と長期的な改善要望のジレンマであり、グローバルと現場に挟まれた中間管理職の苦悩を象徴しているといえるでしょう。効率的に売り上げを増やすには組織全体の方針統一が欠かせない半面、その実現が容易ではないことがよくわかる事例です。

限られたリソースで成果を最大化する「優先度付け」戦略

このような状況の中で、現在あるリードの効果を最大化させる取り組みが重要になります。加藤様いわく「ツールはあくまでツールであり、重要なのは運用するメンバーのマインドセット」とのこと。データを溜めることの重要性とナーチャリング戦略の構築が、成果向上の鍵となっています。

セールステックを活用したリード優先順位付けの仕組み

SimilarWebでは、Salesforce(セールスフォース)をベースとしたデータ蓄積システムを構築し、Qualified(クオリファイド)によるリアルタイム顧客行動分析を実施しています。まずQualifiedとMixpanel(ミックスパネル)を活用して顧客行動データを収集し、そのデータをもとに顕在ニーズの高い顧客(価格表閲覧者)へ優先的にアプローチしています。

Qualifiedで顧客の行動をリアルタイムにモニタリングできるのは確かに便利ですが、「情報を活用するのは難しい」と加藤様は語ります。なぜなら日本人特有の特性として「何かお困りですか?」と接触を図ると逃げる傾向があり、返信率はほぼ0%に等しいという課題があるからです。

さらに加藤様は自社サイトの改善点にも言及し、適切な導線設計ができていない点を指摘。たとえば日本語の翻訳がおかしかったり、価格表がすぐ見つからなかったりと、ユーザーファーストになっていない箇所があると述べられました。

加藤様はセールスプロセスを階段になぞらえ、「階段なしで顧客に一階から二階へ上がってもらうのは困難」だと言います。だからこそ「OPTEMOのようなツールがあれば、心理的なハードルを下げやすい」とおっしゃっていました。

ChatGPT×独自データによる事前準備で深まる顧客理解

SimilarWebでは、ChatGPTの活用を通じてAIエージェントを構築し、既存顧客データを学習させたカスタムエージェントを作成しています。「あなたはSimilarWebのインサイドセールスです」とプロンプトを設定し、出力テンプレートの事前学習による自動フォーマット化を実現しているそうです。

自動化されたフォーマットに対象企業のURLを入力すると、自動的に以下の項目を分析してソリューション提案内容を自動生成することができます。

・経営課題、ミッション
・事業背景(業界状況・市場環境)
・その企業の現状
・ゴール達成に必要なこと

たった5分ほどで完了する効率的な事前準備プロセスにより、3,000件という膨大な数へのリード対応を効率化できているそうです。

SimilarWebの独自データを活用した競合分析アプローチ

Similarwebの強みを活かした独自のアプローチとして、直帰率の高い企業への優先的アプローチ戦略があります。ウェブサイトに課題を抱えている企業を効率的に特定し、競合他社の使用ツール分析による差別化提案戦略を展開しています。

加藤様は実例として、大手食品メーカ2社の「マーボー豆腐レシピ」の検索シェアの分析結果をスライドに映しながら説明。A社が20%のシェアを獲得している一方で、B社のほうが実際に検索流入を多く獲得しているという結果でした。SimilarWebではこのような具体的なデータを提示することにより、マーケティング担当者への関心喚起を行っています。

大企業の多くはSEOツールを使用しているため、分析ツールへの理解度が高い傾向にあります。Similarwebではハウスリストに掲載されている顧客に絞り、価格表閲覧履歴トラッキングや導入事例閲覧履歴などを活用して効果的なアプローチを実現しています。

「データ入力されないCRM」と新任マネージャーを取り巻く環境

私の入社前は各個人がテンプレート化されていないコメント記入しており、データ集計後の分析がしづらい状況にありました。

苦肉の策としてコメント欄に入力する文字列のテンプレートを導入し、特定のコードを設定しています。レポート機能でコメントに特定のアルファベットを含む文字列を全て抽出して分析を実施し、ナーチャリング戦略として翌月・3ヶ月後に再アプローチする計画を立てているとのこと。

ツールを導入してもなかなか社内に定着しなかったそうです。使えるツールの種類が多くても、メンバーが恩恵を感じられなければ、会社が期待した通りに活用されない。これが根本的な原因だと加藤様は指摘します。

新任マネージャーが直面する「現場の抵抗」と成功体験創出の実践

続いて加藤様が言及したのは、新任マネージャーを待ち受ける“見えない障壁”です。外資系企業に限ったことではありませんが、既存のメンバーは新入りに対して潜在的に心理的抵抗感を抱く傾向があるとのこと。その抵抗感が「新しく入社した人になんとなく失敗してほしい」という感情につながるそうです。そのような背景から、新任マネージャーが苦労する場面も少なくありません。

成功体験の創出については、加藤様は「マインドセット」という表現を使って説明。現在はメンバーみんなが互いに学べる環境や仕組みづくりを検討しており、他者から学ぶことは自分のためにになる、という成功体験を感じて欲しいと思っています。

加藤様は、続いてSalesLoft(セールスロフト:メール自動配信ツール)の活用促進に触れました。とあるメンバーが「使い方がよくわからない」からSalesLoftを使っていなかった事例を挙げ、使い方をメールで教えるか、「聞いてきたら教える」スタンスで対応すると述べ、柔軟な姿勢でメンバーと向き合う重要性を示唆しました。

【ツールの活用事例】SalesmarkerとSalesLoftの実践

インサイドセールスの成功には、適切なタイミングで適切な顧客にアプローチする取り組みが不可欠です。Similarwebでは最新のセールステックツールを活用して、購買意欲の高い顧客を効率的に特定し、アプローチの精度を飛躍的に向上させています。従来の「とりあえず電話をかける」アプローチから脱却し、データドリブンな営業活動を実現することで、限られたリソースでも最大の成果を生み出しています。

SalesMarke導入事例:「買いたい気持ちになっているお客様」への的確なアプローチ

Similarwebでは、インテントデータツール「SalesMarker(セールスマーカー)」を導入しています。コンセプトは、“お客様が買いたい気持ちになっているタイミングでのアプローチ最適化”です。IPアドレスと広告サーバーキャッシュ履歴を紐付け、企業のパソコンIPアドレスから特定キーワード検索行動を分析する方法でデータを取得します。

「競合分析」「市場分析」などのキーワードに基づいて抽出されたユーザーの行動データは、全体データで530万件ほど。Similarwebが設定した関連キーワードでの該当企業は、約1,250社となっています。インテントスコアに基づいて優先順位をつけるシステムになっており、活用方法は新規リスト作成と既存ハウスリストとの照合による優先順位付けの2つです。

具体例として、「100件のハウスリストから競合分析を調べた10社を優先的にアプローチすることで、リアルタイム検索行動の可視化とアクセス解析キーワードの把握が可能になる」と加藤様は語りました。

SalesLoftによるメール自動化とエンゲージメント分析

続いて先ほど登場したメール自動配信ツール「SalesLoft」の使い方を実践。Similarwebではメール開封率・クリック率による詳細なリード優先順位付けを実施しており、5回以上メールを閲覧した企業への最優先電話アプローチを行っているそうです。

メール閲覧の精密な計測方法として、ただ開封しただけではカウントしない仕組みを構築。メールをスクロールして最下部に設置されている空白zipファイルを読み込むと、1回としてカウントします。またメールを転送したり、転送したメールが閲覧されたりした場合も回数にカウントする仕様です。

転送・詳細閲覧行動の分析による温度感測定により、一日あたり30件~50件の架電における効率的な優先順位付けを実現しています。メール配信実績を話題に出すことでユーザーから好反応を引き出し、3,000件という膨大なリード数に対する優先順位付けの重要性を実証しています。

質疑応答

講演後の質疑応答では、参加者から実践的な質問が寄せられました。

Q1.マーケティング観点でのリード数・コールの質の改善について

【参加者からの質問】

現在リードは多く入ってくるものの、さらに数を増やしたいと考えています。コール内容の改善だけでなく、マーケティング面からの流入改善についてもお聞かせください。

集客の基本戦略として、集客の基本戦略として適切なゴール設定とその方法を明確することが重要で、その上で競合分析の実践的活用では、有料広告キーワードや投資額の詳細把握により、成功事例の模倣が最も効率的なアプローチであることが示されました。キーワード調査の重要性として、実際の検索用語の正確な把握(格安SIMか格安モバイルかなど)や、ランディングページ作成とキーワード戦略の連携、月間検索数とクリック率の詳細分析の必要性を強調して訴えています。

Q2.データ蓄積KPIと報酬設計について

【参加者からの質問】

外資系企業ではSFAへのデータ入力がKPIや報酬設計に組み込まれることがあります。SimilarWeb Japan社ではどのような取り組みをしていらっしゃいますか?また、データ入力を徹底させることに対する意見を伺いたいです。

結論として、「SFAへのコメント入力を増やしてデータ活用を促したいが、コール数との兼ね合いで本社と温度感の違いがある」と加藤様はおっしゃいました。ヴァイスプレジデントとやり取りした内容を引き合いに出しつつ、「日々のコール数確保だけでなく、将来の計画やコンバージョンを考慮すると、データ入力は重要。イスラエル本社と日本との文化や商習慣の違いが影響している可能性を感じる。アメリカでのインサイドセールスの普及度合いと比べると、イスラエル本社のやり方は独特かもしれない」とも述べ、回答を締めくくりました。

交流会の様子

講演後の交流会では、多くの参加者が加藤様や小池を囲み、熱心に質問する姿が見られました。参加者同士も積極的に名刺交換を行い、インサイドセールスの課題や成功事例について情報交換する様子が印象的でした。

とりわけ参加者の間で関心が高かったトピックは、「Salesmarkerの実際の活用方法」と「ChatGPTを活用したAIエージェントの構築方法」です。多くの方が月間3,000件という膨大なリード数への対応方法について加藤様に質問され、リード優先順位付けの具体的な手法やツール活用のコツについて熱心にメモを取る姿が見られました。

さらに、加藤様が実演されたSalesmarkerの画面に対する質問が相次ぎ、「IPアドレスベースでの企業行動分析」という新しいアプローチに強い関心を示す参加者が多数いらっしゃいました。

3,000件のリード獲得にかかる投資コストとリターンの最適化、リードジェネレーション計画とインサイドセールスチーム設計の連携、データを資産化するための組織文化構築といったテーマについても活発な議論が行われ、終始にぎやかな雰囲気でした。

インサイドセールス研究会の交流会では、毎回「新しい体験を提供する」というテーマのもと、参加者に特典としてちょっとした品物やサービスをプレゼントしています。

今回は参加者の皆さまへのお土産として、モンマルシェ株式会社の「野菜をMOTTO(もっと)」をご用意しました。「忙しいビジネスパーソンでも気軽に野菜を摂れる」「見た目がおしゃれで食べたくなる」など、皆さまから好評でした。

最後に

今回のインサイドセールス研究会では、SimilarWeb Japan株式会社の加藤 直也様から、月間3,000件という大量のインバウンドリードを扱う現場のリアルな課題と解決策について、豊富な実例と最新ツールの実演を交えてお話しいただきました。

リードの量と質のギャップ、組織間のKPI設計の違い、そしてセールステックとAIを活用した効率化手法など、多くのインサイドセールス担当者が直面する課題について、実践的で具体的な解決アプローチを学ぶことができました。

本イベントの内容が、ご参加いただいた皆様のこれからの活動に少しでもお役に立てば幸いです。

次回のインサイドセールス研究会は、旭化成ホームズ株式会社の飯島 詳雅様をゲストに迎え、2025年6月19日(木)19:00-21:00に渋谷で「BtoC×大企業のインサイドセールス立ち上げの軌跡〜転向して気付いたインサイドセールスの価値とは〜」というテーマで開催いたします。

▼参加申し込みはこちらから
https://share.hsforms.com/1lrRTnS0zR_GIBu7gbw5tvAcqns4?utm_seminar=optemo_isreport

次回のインサイドセールス研究会で、多くの皆様とお会いできることを楽しみにしております。

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