インサイドセールス研究会2026年6月例会レポート
株式会社OPTEMOが運営しているインサイドセールス研究会というコミュニティでは、毎月オフラインイベントを開催しております。6月に開催されたイベントの内容について、より多くの皆さまに知っていただく機会となることを願い、イベントレポートを作成しました。
今回のレポートでは、2026年6月17日(水) に渋谷に位置する千葉道場コミュニティスペースで開催されたインサイドセールス研究会の内容をまとめております。ぜひご覧ください。
目次
インサイドセールス研究会について
インサイドセールス研究会は、『会社を超えてインサイドセールス同士がつながり「師と友」を作れる場』として株式会社OPTEMOが運営しているコミュニティです。
インサイドセールスという業務の性質上、社外での横のつながりが少ないという声を受け、2023年3月からこのコミュニティの運営を始めました。毎月特別なゲストを迎えて実践的なノウハウを提供しています。また、Facebookのグループで情報発信もしており、誰でも無料で参加できます。
https://optemo.co.jp/lp/is_ken
今回のテーマ
今回のイベントでは、株式会社XAION DATAの松山 真様をゲストにお迎えしました。「架電に依存せずキーマンアプローチ!マルチチャネルで商談を生み出す実践事例」というテーマで登壇していただきました。
モデレーターはOPTEMO代表の小池桃太郎(@MomotaroKOIKE)が務めました。
松山様ご講演
松山様は株式会社XAION DATA(ザイオンデータ)のセールスマネージャーです。新卒で富士通に入社し、既存顧客へのアカウントセールスを長く経験されてきました。入社6年目にはスタートアップへ出向し、ゼロからのビジネス立ち上げに携わっています。その経験を活かしてXAION DATAにジョインし、入社から約2年でセールステック事業を立ち上げられました。

当日のイベントでは、以下のトピックについてお話しいただきました。
- 「AUTOBOOST」について
- 買い手は営業の連絡を待たない時代へ
- XAION DATAのIS体制とアクションフロー
- 【AI活用の具体例】Claude×Salesforceの連携
- マルチチャネルアプローチの具体事例
- チャネルとしてのLinkedInの特徴
- AI活用の成否を分けるコンテキストセールス
「AUTOBOOST」について

講演の冒頭で、松山様はまず自社サービスである「AUTOBOOST(オートブースト)」を紹介されました。同サービスは、LinkedInを通じた営業アプローチを効率化するプロダクトです。
最大の特徴は、従来の営業データベースにキーマンや決裁者へ直接アプローチできる機能を掛け合わせている点です。オープンデータを統合する特許技術により、約1000万件にのぼる人物データから、業界や企業規模、部署、役職などの条件でターゲットをピンポイントに絞り込むことができます。
さらに、LinkedIn上でのメッセージの一括送信やフォローアップの自動化、やり取りの一元管理機能も備えており、一連のアプローチを一気通貫でサポートする点が解説されました。

導入事例として、AI人材育成を手がけるユームテクノロジージャパン株式会社のケースが紹介されました。同社では旧来のテレアポからLinkedInによる決裁者アプローチへ切り替えた結果、商談獲得数が従来の4倍に増加したとのことです。
買い手は営業の連絡を待たない時代へ

続いて松山様は、インサイドセールスを取り巻く時代背景について言及されました。「見込み顧客は待っていない」という現在の実態を踏まえ、営業側は従来のアプローチそのものを変えていく必要があると指摘します。
BtoB購買行動の変化

かつてのBtoB営業では情報の非対称性が存在しており、顧客は問い合わせを通じて初めて営業から情報を得ていました。しかし現在では、その垣根はほぼ消失しているといいます。
顧客自身がSNSやWebメディア、AIなどを通じて事前に情報を集めるため、営業が接触する前に購買プロセスの約70%が完了しているとのこと。営業と接触する時点で、すでに顧客が競合との比較まで済ませているケースも少なくありません。
そのため、顧客の文脈を把握しないままアプローチすることは、むしろ危険だと松山様は語ります。「自分のことを知らない相手には話したくない」という心理が働くため、相手を理解したうえでの接触が欠かせないのです。
既存手法の限界とマルチチャネルの必要性
購買行動が大きく変わる一方で、営業側の手法は旧来のまま据え置かれていると松山様は指摘します。BDRのアプローチは依然としてテレアポや架電が中心で、買い手の変化に営業が追いついていないのが実態だといいます。さらにAIによるスクリーニングや自動音声が普及し、電話がつながりにくい環境はさらに厳しさを増しています。

その対策として挙げられたのが、購買が進む前の段階から複数のチャネルで接点を持ち、顧客体験のよいアプローチを設計するという考え方でした。電話や展示会といった既存チャネルは競合も同じように活用しているため、顔ぶれが固定化しがちです。だからこそ、新しいチャネルを試すことが他社との差別化につながると松山様は語っています。
XAION DATAのIS体制とアクションフロー
ここからは、XAION DATA自身のインサイドセールスの体制とアクションフローが共有されました。
アポイント獲得の前提と比率
同社のアポイント獲得は、インバウンドがメインです。比率としてはインバウンドが6〜7割、アウトバウンドが3〜4割で、インバウンドのうち2〜3割はOPTEMO経由で獲得しているとのことです。Webから流入するユーザーは「自分で情報を集めたい」という心理が強いため、メールやSNSといったテキストベースのチャネルを中心に活用しています。

自社プロダクトの「AUTOBOOST」は2年前に提供を開始し、インサイドセールスはその1年後に立ち上げられました。そのため、現時点では紹介による接点から生まれる商談がベースです。今後の課題は、紹介に依存しない新規開拓の仕組みづくりや、インサイドセールス組織の体制強化にあるといいます。
アクションフローと即時連絡ルール
アクションフローは、AIと協働する形で組み立てられています。
アウトバウンドの場合は、まずリスティング(リスト化)を行ったうえでアプローチへと進みます。ターゲットの選定や調査、アプローチの各段階でAIを活用している点が特徴的です。
一方インバウンドでは、即時連絡のルールが徹底されています。問い合わせがあると自動で日程調整する仕組みになっており、システムが動作しなかった場合も土日を除いてインサイドセールスが5〜10分以内に必ずコールするようにしているそうです。
【AI活用の具体例】Claude×Salesforceの連携
続いて、AIを業務にどう組み込んでいるかという具体的な内容に踏み込んだ説明がありました。
ClaudeとSalesforceの連携で実現すること
XAION DATAではGeminiやChatGPTなどを併用しつつ、全社でClaudeを法人契約して積極的に活用しています。特徴的なのは、SalesforceとClaudeをAPIで接続し、Salesforce上にある必要なデータをチャットのUIから引き出せるようにしている点です。
これにより、過去の商談内容を会話ベースで振り返ったり、手間のかかるスポット分析やレポートをClaudeで簡単に出力したりといった使い方が可能になっているといいます。
コール準備でのAI活用と現場の実態
コールの準備においても、AIの活用が進んでいます。流入リードへ架電する際には、SalesforceのリードURLを入力して過去の接点履歴を抽出します。誰がそのリードと接点を持ったのか、他部署からのアプローチや他プロダクトの契約があるかどうかといった情報まで把握できるそうです。

そのうえでアプローチの可否や前提条件を確認し、Claudeに訴求の方法やコールスクリプトまで作成させるという流れになっています。
ただしAIから得られる情報量は多く、内容を把握しつつスムーズに話すのは難易度が高いといいます。そのため、スクリプトを使うのは主に新人や若手で、現場で最も多いのは「電話をかけながらホームページを見る」というスタイルだと松山様は明かしました。
マルチチャネルアプローチの具体事例
ここからは、メールとLinkedInを使い分けた接点づくりの具体事例が紹介されました。
事例①:インバウンドの丁寧なメールフォロー

ひとつ目は、インバウンドリードへの丁寧なメールフォローの事例です。Webからの流入後に電話をかけ、その後メールでフォローするというケースで、過去の接点や「導入はすぐではない」といった情報を踏まえてアプローチします。
このときのメールは「非常に長くていねい」なものだといいます。インバウンドリードに対して手厚いメールを送ることが、商談化率の高さにつながっているそうです。メールには、「why you/why now」に該当する部分や、Claudeで抽出した過去の接点、競合比較を踏まえた自社の強みなどを明記しています。
こうしたきめ細やかなフォローによって顧客の温度感が上がり、フィールドセールスへトスアップする際の体験や受注率の向上も狙えると松山様は語ります。AIを活用すれば工数は抑えられるため、インバウンドを重視する企業には特に有効な手法だといえそうです。
事例②:LinkedInを活用したアプローチ

ふたつ目は、LinkedInを軸としたマルチチャネルアプローチの事例です。BDRがLinkedInでアプローチし、それがファーストタッチになったケースが共有されました。
実際にあったケースでは、LinkedInで接点を持ったあとに顧客が資料をダウンロードしたものの、インサイドセールスからの電話には出ず、丁寧なフォローメールでもつながらなかったといいます。最終的には再びLinkedIn経由で連絡し、日程調整に至りました。顧客が多忙で、電話やメールに対応できる状況になかったことが背景にありました。
LinkedInはスマートフォンにプッシュ通知が届くため見られやすく、返信のコストも低い点が特徴です。一文で気軽に送れる手軽さもあります。たとえ一度音信不通になっても、最初の温度感が高かったリードはLinkedInで追いかけることで再びつながるケースがあり、これはインサイドセールスでもフィールドセールスでも同様だと松山様は説明しました。
チャネルとしてのLinkedInの特徴
松山様は、ビジネス向けチャネルとしてのLinkedInの有効性についても解説しました。
3〜4年前までは転職ツールとしてのイメージが強かったLinkedInですが、近年はブランディングやネットワーキングの構築を目的とした質の高いユーザーが増えているといいます。日本国内のユーザー数は500万人を超えており、XやFacebookとさほど変わらない規模です。とりわけ大手企業に勤めるユーザーが多く、大手の攻略に有効だと語ります。

メールの開封率やCTRが下がるなかで、SNSは接点をつくる効率が高く、ナーチャリングやイベント集客にも活用できます。ただし、効果的に運用するには効率化のためのツールが必要になるとのことです。
AI活用の成否を分けるコンテキストセールス

講演の終盤、松山様はAI活用のポイントとして「コンテキストセールス」という考え方を紹介しました。これは、インプットの質がアウトプットを決めるという発想に基づくものです。
AIのモデル自体は放っておいても賢くなっていくため、そこを意識する必要はないといいます。重要なのは「インプットするデータが弱いと、アウトプットも弱くなる」という点です。
そこでプロンプトを打つ前に、自社や商材、顧客企業、過去の接点といった前提条件をあらかじめ入力してから問いかけることが大切になります。この前提を与えたうえでAIを使う進め方を、松山様は「コンテキストセールス」と表現しました。
また、AIの出力精度を上げるために文脈やデータを与えておくことを「AIReady」と呼びます。メールやチャットなどの履歴を読み込ませることで、提案資料の作成や調査の精度が上がると語っていました。
質疑応答
講演後の質疑応答では、参加者から実践的な質問が寄せられました。

Q1. LinkedInのアカウント形態と、Salesforce運用の工数について
【参加者からの質問】
LinkedInのアカウントは法人名で運用されているのでしょうか。それとも、組織や企業の中で個人として運用されているのでしょうか。あわせてSalesforceの運用工数が大変ではないか、それを補うような機能があるのかも教えていただけると嬉しいです。
【松山様の回答】
LinkedInの仕様上、法人アカウントだとDMが送れないため個人単位で作成します。ただし会社名・肩書・プロフィールはしっかり整えて、信頼性を持たせる工夫が必要です。LinkedInには個人同士でビジネスパーソンが交流するカルチャーがあるため、法人よりも個人の方が親しみやすく信頼されやすい面もあると思います。
Salesforceの運用については自社プロダクトを使って確認していきますが、どうしても該当しない箇所は手入力で対応しています。
Q2. LinkedInが使えない場合、メールやフォームでの接点づくりは有効か
【参加者からの質問】
弊社でも、LinkedInのようなSNSチャネルでの接点づくりをやっていきたいところなのですが、法務観点でLinkedInが活用できないという事情があります。メールと問い合わせフォームで接点づくりをしようとしているのですが、そのあたりの有効性についてお聞かせください。
【松山様の回答】
既存のハウスリストへアプローチするという前提で回答すると、反応が得られる確率は1/1000〜1/10000程度で、ターゲット次第というのが正直なところです。
広いターゲットを掘り起こしていくには有効だと思いますが、ABM寄りでターゲットを絞っている場合は、得られる成果よりも機会ロスの方が大きくなってしまうこともあります。
とはいえチャネル自体が悪いというよりは、アプローチの仕方をカスタマイズしていくことが大切だと考えています。そのうえで、相対的にはLinkedInの方がよいというのが私の感触ですね。
Q3. Claudeでのメール作成時間と、活用スキルの平準化について
【参加者からの質問】
Claudeを使ってメールを送られているとのことでしたが、1通あたりどれぐらいの時間をかけられているのでしょうか。ファクトチェックも必要だと思うので、その点も含めてどの程度の手間で送られているのか伺いたいです。また、実装するにあたっては、各メンバーが同じレベルで使えるかどうかがポイントだと思うのですが、工夫されていることはありますか。
【松山様の回答】
結論として、ファクトチェックや手直しに時間がかかるため、メンバーによっては1通あたり10〜15分程度かけています。
AIには完璧な文章を求めるのではなく、「初期ドラフトの作成」や「過去の接点・最新リリースなど、担当者が気づいていないファクトの提示」を任せるのが最適です。結果としてメール作成に時間がかかったとしても、それによって商談化率や単価の向上が証明できるのであれば、時間をかける価値があると考えています。
一方で、ジュニアのメンバーがAIを使うと不自然な文章になりがちで、活用が難しい面もあります。ですので、メンバーの成熟度に応じて使用の有無を取捨選択し、実務経験の多いベテランが使うのが一番よいと感じていますね。
Q4. AIエージェントの台頭により生じるセールス・マーケの変化について
【小池からの質問】
セールス・マーケの文脈に限らず、AIエージェントという存在の台頭は、もう無視できないものだと感じています。AIエージェントが台頭していく中で、セールス・マーケに今起きていること、そしてこれから起きることを、XAION DATAとしてどう見ていらっしゃいますか?。
【松山様の回答】
人間とAIの主従関係、その比重が逆転しつつあると感じています。これまでは人間が主でAIが従でしたが、その関係が入れ替わってきている感覚ですね。
ClaudeのようなAIを使えばワークフローを組むこともでき、メッセージの作成からレビュー、送信、Slackへの通知まで、業務プロセス全般をAIがカバーできるようになってきました。
そうなると、人間の役割はクオリティのチェックと、AIが動き出す前に文脈を与えることへ移っていきます。人間がサポーター側に回るという世界観が、いよいよ現実味を帯びてきていると思います。
交流会の様子

講演後の交流会では、マルチチャネルでの接点づくりやAI活用に関する話題を中心に、参加者同士の活発な意見交換が見られました。
名刺交換の際には、「架電に依存しないアプローチの具体像が見えた」「LinkedInをビジネスチャネルとして捉え直すきっかけになった」といった声が聞かれました。自社でも複数チャネルでの接点づくりに取り組んでいるという参加者からは、運用上の工夫について熱心に松山様へ質問する姿も見られました。
特に関心を集めていたのは、ClaudeとSalesforceを連携させたAI活用の話題です。「過去の接点をAIで引き出してメールに反映する流れが参考になった」「コンテキストセールスという考え方が腑に落ちた」といった感想が多く、AIをどこまで現場の業務に組み込めるかという点に、多くの参加者が手応えを感じている様子でした。
最後に
今回のインサイドセールス研究会では、購買行動が大きく変わるなかで、インサイドセールスがどのように接点を設計していくべきかについて具体的な実践事例とともに学ぶことができました。
顧客の購買行動が変化する中、「インサイドセールス=電話」から脱却しマルチチャネルで接点を持つ重要性が共通認識となりました。また、AIに文脈を与える「コンテキストセールス」や、メンバーの習熟度に応じた現実的なAI活用の判断も、現場実装の大きなヒントでした。
本イベントの内容が、ご参加いただいた皆様の今後のインサイドセールス活動に少しでもお役に立てば幸いです。
次回のインサイドセールス研究会は、株式会社パートナープロップの森本聖士様をゲストに迎え、2026年7月16日(木)19:00-21:00に渋谷にて開催いたします。テーマは「顧客の心を動かす一文を学ぶ! マーケ×ISのための科学的メール添削会」です。

マーケティング担当とインサイドセールス担当の2人1組での参加が必須となっており、10社限定で参加費は無料です。当日までに各自がメールを1通転送し、参加者みんなで添削しながら「どうすれば顧客の心を掴めるか」を議論する内容となっています。お申し込みは、フォームからご自身の参加枠を申し込んだあと、別途届くメールからもう1名分を追加する形です。
次回のインサイドセールス研究会で、多くの参加者とお会いできることを楽しみにしております。
OPTEMOの特徴や活用方法をまとめた資料です。
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