株式会社OPTEMOが運営しているインサイドセールス研究会というコミュニティでは毎月オフラインイベントを開催しております。10月に開催されたイベントの内容について、より多くの皆様に知っていただく機会となることを願い、イベントレポートを作成しました。
今回のレポートは、2024年10月30日(水)に渋谷に位置するイベントスペースで開催されましたインサイドセールス研究会の内容をまとめておりますので、ぜひご覧ください。
インサイドセールス研究会について
インサイドセールス研究会は、『会社を超えてインサイドセールス同士が繋がり「師と友」を作れる場』として株式会社OPTEMOが運営しているコミュニティです。
インサイドセールスという業務の性質上、社外での横の繋がりが少ないという声を受け、2023年3月からこのコミュニティの運営を始めました。毎月1回、特別なゲストを迎えて実践的なノウハウを提供しています。また、Facebookのグループで情報発信もしており、誰でも無料で参加できます。
https://optemo.co.jp/lp/is_ken
今回のテーマ
今回のイベントでは、株式会社RevComm 代表取締役で、『VOICE ANALYSIS 音声×AIがもたらすビジネス革命』の著者でもある會田 武史 様(@takeshida5)をゲストにお迎えし、「AI全盛時代に向けたインサイドセールスの競争力~音声データの価値とは?~」をテーマで講演いただきました。モデレーターはOPTEMO代表の小池桃太郎(@MomotaroKOIKE)が務めました。
會田様におまとめいただいた資料はなんと200ページ超え!お時間の都合もあり、当日のイベントでは簡潔に大きく2つのトピックに絞ってお話しいただきました。
- AI時代に於ける、DX投資のマインドセット
- Voice AIがSalesにもたらすインパクトについて
また今回のインサイドセールス研究会は、大変ありがたいことに想定以上のお申し込みを頂戴し、会場を変更しての開催となりました。合計で76社98名の方にへのお申し込みいただきました。
「AI」といういつもと違ったテーマでのアプローチで、ご参加いただいた皆さんも非常に真剣に聞き入っていたのが大変印象に残っています。
會田様ご講演
今回のイベントでは、AI時代における音声データの価値(特に音声データ)とインサイドセールスの未来について、特にセールス分野への影響について詳細にお話しいただきました。
AIの急速な発展により、アメリカではインサイドセールス、特にSDRの分野ですでに大きな変化が起きています。一方で、現状のAIモデル(GPT-3.5やClaude)はまだ完全ではなく、人間の介入が必要な場面が少なくないことも強調されました。
また會田様は、今後もAIはさらに進化し、音声コミュニケーションや多言語対応が当たり前になると予測しています。加えてAIの進化により、労働のあり方や価値観が大きく変わる可能性があることにも言及し、今後はEQ(感情知能)の高い人材の重要性が増すと語りました。
ここからは、当日のセッションの内容をさらに深掘りしてお伝えします。
BtoBにおけるデータ(音声データ)活用の重要性
講演の冒頭では、AIの発展を振り返りながら、BtoBにおける音声データ解析の重要性についてお話しいただきました。
BtoBにおいては音声、テキスト、画像などのさまざまなデータが存在しています。この中でも音声データには膨大な情報が含まれており、これをAIによって解析することで、顧客のニーズや感情、行動傾向をより深く理解できるようになります。また、音声データを活用することで、営業プロセス全体を見直し、効率化することが可能だと語られました。
トークンやアセットなどの概念を用いながら、RevComm社が提供するサービスの事例を基に、音声データの活用による営業の質の向上について解説いただきました。
AI時代におけるDX投資に重要なマインドセットは「短期的なPLインパクト」と「中長期的なBSインパクト」
AIが普及しつつある現代において、DX投資のマインドセットとして「短期的なPLインパクト」と「中長期的なBSインパクト」の両方を考慮する必要があると會田様は語りました。
AI時代において、データをいかに蓄積し、どのように活用するかは非常に重要です。そのため、アプリケーション導入による短期的な結果だけでなく、「アプリケーションを使った結果、どんなデータが集まるのか」という観点が投資判断において重要だと指摘されました。加えてこのような視点は、プロダクトの方向性や営業活動時の訴求においても注目すべきポイントです。
生成AI(Voice AI)がセールスにあたえるインパクト
マッキンゼーの資料によると、生成AIの進化によって最も影響を受けるのが「セールス」だと言われています。具体的には「GPT NewVoiceモード」に代表されるように、GPTに音声で話しかけると音声で返ってくるということが当たり前になると考えられています。
現在の生成AI(Voice AI)は、キャズム理論でいう“イノベーター”と“アーリーアダプター”の中間にあります。會田様によれば、AI活用におけるステップとして、雑務係→コーチアドバイザー→プロフェッショナルの3段階があり、アメリカにおいてはすでにAIはコーチアドバイザーの役割を担っており、リアルタイムで営業活動をアシストしてくれる「Assisted selling」としての活用が実現しているといいます。
RevComm社のMiiTelでは、すでに6~7年前からお客様との電話やWebミーティングの内容を自動で議事録にまとめ、CRMにインプットできるところまで実現できていましたが、現在は営業が話した結果をもとに、「もっとこう話しませんか?」「抑揚が少なく感情が伝わりにくいのでもっと大きな声でハキハキと話しましょう」などのAIによるアドバイスまで実現されているそうです。
アメリカの企業においては、SDRが自動化されている企業も多く、1年前に比べてすでにSDRの数が3分の1にまで減少しているといいます。一方で、リード数は増加したものの、クロージングレートは減少、成約数は変わらないという興味深い結果もあるようで、現在のAIモデル(主にGPT-3.5やClaude)はまだ完全ではなく、またレイテンシー(遅延)もあるため、まだまだ人間の介入が必要な場面が多いのだと會田様は語ります。
しかしAI(GPT)の進化は非常に早く、今年の末にはGPT-5とコンピューティングの進化が起こり、音声対音声でコミュニケーションをするのが当たり前の世界がくると指摘されました。
インサイドセールス分野でAIによる人材代替は進むのか?
会の後半では、カスタマーサポートやインサイドセールスなどの分野でAIによる人材代替が進む可能性についてもお話しいただきました。
レイテンシーが許容されてかつ定型的な会話であれば、AIに置き換えることは可能で、特に決まったやり取りや回答が多いカスタマーサポートの分野ではすでにAI活用が進んでいるそうです。
インサイドセールスにおいては、顧客からの問い合わせ(インバウンド)対応がメイン業務であるSDRは、定型対応の少ないBDRよりも先にAIに置き換わる可能性が高いと示唆されました。こうした大きな変化の中で、インサイドセールス担当者がどのようなマインドセットであるかというのが非常に重要だと會田様は語りました。
また、インサイドセールスでAIに置き換えられない人材として「EQ(感情知能)の高い人材」が挙げられました。例えば、経営者に対しては少し早口で結論ファーストで話し、ご高齢の方に対してはゆっくりと信頼関係が築けるような話し方をするなど、話し方によって相手がどのような感情を発露するかを理解したうえで科学し、相手に合わせて話し方などを変えることができるようなEQの高い人材が今後は重要視されるといいます。
最後に會田様は、日本の労働人口の減少(2000年から2060年で約半減)を踏まえ、AIが労働力不足を補える可能性があると指摘。AIを活用し、より短時間で高付加価値を生み出すことができれば、たとえ労働人口が半分になったとしても、GDPを今よりも向上させることができるのではないかとお話しいただきました。
交流会の様子
講演および質疑応答が終了し、第二部の交流会がスタート。
交流会では會田様に直接質問をされる方がいたり、インサイドセールスの皆さん同士で情報交換や日ごろの活動のシェアをされたりと、オフラインならではの活気・熱量を感じる時間となりました。特に今回のイベントはご参加いただいた人数も多かったので、いつも以上の盛り上がりを感じられました。
最後に
今回のインサイドセールス研究会は、これまでとは少し毛色の違う講演となりました。AIが急速に発展している現代社会において、私たちインサイドセ-ルスの働き方にもさまざまな影響が出てきそうです。本イベントの内容が、ご参加いただいた皆さんのこれからの活動に少しでもお役に立てれば幸いです。
全てを載せきれないのが残念ですが、終了後にXやLinkedInに多くの感想をお寄せいただきました。中には、当日の内容を長文で書き起こしてくださる方もおり、非常に嬉しいです。OPTEMO一同、すべての感想に目を通しています。